微生物学:複雑な腸内細菌群集に対するT細胞レパートリーのマッピング
Nature 621, 7977 doi: 10.1038/s41586-023-06431-8
マイクロバイオーム由来の特定の細菌株は、強力で抗原特異的なT細胞応答を誘導する。しかし、マイクロバイオームが誘導するT細胞の特異性は、腸の細菌群集全体について細菌株レベルでは調べられていない。今回我々は、無菌マウスに組成が明らかな混合細菌群集(約100の細菌株)を定着させ、各株に対するT細胞応答をプロファイリングした。T細胞応答のパターンから、腸内レパートリー中の多くのT細胞が、細菌群集に含まれるいくつかの細菌株を認識していることが示唆された。92のT細胞受容体(TCR)クロノタイプからT細胞ハイブリドーマを構築し、各ハイブリドーマに対して細菌群集の各株をスクリーニングすることにより、ほぼ全ての細菌特異的TCRが、1つのTCRが多数の細菌株を認識する関係を示し、豊富に含まれる13のTCRクロノタイプそれぞれが、18のファーミキューテス門細菌を認識することが分かった。また、3つのプールされた細菌ゲノムライブラリーをスクリーニングすることで、これら13のクロノタイプは、単一の標的、つまりATP結合カセット輸送系の保存された基質結合タンパク質を共通に標的とすることが分かった。このタンパク質由来の1つのエピトープに特異的な末梢の制御性T細胞と17型ヘルパーT細胞は、細菌群集を定着させたマウスおよびSPF(specific pathogen-free)マウスに豊富に存在している。我々の研究は、T細胞による共生細菌の認識が、広く保存され、高発現している細胞表面抗原に集中していることを明らかにしており、これによって定着細菌特異的な免疫応答を合理的に変化させたり方向転換させたりする新たな治療戦略への扉が開かれる。

