環境科学:熱帯林は臨界温度の閾値に近づきつつある
Nature 621, 7977 doi: 10.1038/s41586-023-06391-z
熱帯の高木の光合成装置が機能不全を起こし始める臨界温度(Tcrit)は、平均で約46.7°Cである。しかし、気候変動の下で、熱帯の植生が経験する葉の温度(葉温)がこの閾値に近づいているのか、あるいは間もなく近づくかは、現在のところ不明である。今回我々は、個々の葉に装着した熱電対、観測塔に設置した赤外放射計、国際宇宙ステーションからのリモートセンシング(ECOSTRESS)という3種類の観測の結果から個別に推定された熱帯全域の林冠温度が、乾燥期では日中に最高で約34°Cに達し、高温側に長く伸びた分布の裾部分では40°Cを超える場合もあることを見いだした。熱帯域の複数地点で得られた葉の熱電対データからは、中程度の温度のピクセル内でも、林冠上部の葉は0.01%の割合でTcritを超えていたことが示唆された。さらに、林冠上部の葉温を上昇させる実験(ブラジルで+2°C、プエルトリコで+3°C、オーストラリアで+4°C)では、葉温は非線形的に上昇し、葉温の最高値は1.3%の割合でTcritを超えた(43.5°Cを超えたのは11%、49.9°Cを超えたのは0.3%)。こうした動態を取り込んだ経験的モデル(昇温実験データで検証)を用いたところ、熱帯林が、代謝機能の潜在的転換点に達するまでに耐えることのできる気温上昇は、最高3.9 ± 0.5°Cであることが明らかになった。しかしこの予測は、熱帯高木のTcritの可塑性や範囲に残されている不確実性、ならびに葉の枯死が高木の枯死に与える影響によって、大幅に変化する可能性がある。この4.0°Cという推定値は、熱帯林に関する気候変動予測の「最悪のシナリオ」(代表的濃度経路〔RCP〕8.5)の範囲内であるため、我々にはまだ、(例えば、RCP6.0や8.5の経路を避けることで)炭素、水、生物多様性において極めて重要なこれらの地域の運命を決定する力が残されていることになる。

