遺伝学:ヒトのmtDNAのコピー数とヘテロプラスミーの核遺伝子による制御
Nature 620, 7975 doi: 10.1038/s41586-023-06426-5
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は母性遺伝する高コピー数のゲノムで、酸化的リン酸化に必要である。ヘテロプラスミーとは、1つの個体中にmtDNAの複数の対立遺伝子が混在している状態を言い、病気や加齢との関連が知られている。ヒトのヘテロプラスミーによく見られる多様性の原因となる機構や、この多様性に対する核ゲノムの影響は、いまだに詳しい解明がなされていない。今回我々は、27万4832人から得た血液由来の全ゲノム塩基配列を用いて、mtDNAのコピー数(mtCN)とヘテロプラスミーを定量化し、ゲノム規模関連解析を行って関連する核の座位を明らかにした。血液細胞の組成により補正したところ、mtCNは加齢とともに直線的に減少し、92核座位のバリアントに関連していることが分かった。そして、ほぼ全ての人にヘテロプラスミーになるmtDNAバリアントが存在し、それらは2つの原理に従うことが分かった。すなわち、(1)ヘテロプラスミックな一塩基バリアントは体細胞的に生じる傾向があり、70歳以降に急激に蓄積する一方、(2)ヘテロプラスミックな挿入欠失(インデル)は混合物として母性遺伝し、その相対的レベルには、mtDNAの複製、維持と新規経路に関係する42核座位が関連している。これらの座位は特定のmtDNA対立遺伝子に複製上の優位性をもたらすことによって作用しているのかもしれない。例証となるものとして、我々は、ヒトの50%以上が持つ長さバリアントを特定した。これはmtDNAの転写/複製切り換えに関わると以前提案されたグアニン四重鎖中のchrM:302の位置にある。このバリアントはシスに作用してmtDNAの量を遺伝的に制御し、それ自身はこの調節切り換えを行う装置をコードする核座位とトランスに関連している。これらの知見から、ヒト集団全体で、核ゲノム中によく見られる多様性が、mtCNの多様性やヘテロプラスミーの動態を形作っている可能性が示唆される。

