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生化学:ミトコンドリアの統合的なストレス応答が肺上皮細胞の運命を制御する

Nature 620, 7975 doi: 10.1038/s41586-023-06423-8

1型肺胞上皮(AT1)細胞は、血液と空気の間で酸素と二酸化炭素を交換するのに不可欠な細胞である。2型肺胞上皮(AT2)細胞は部分的に拘束された幹細胞集団として働いて、出生後の肺胞形成の際にAT1細胞を作り出し、またA型インフルエンザや重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)肺炎後の肺胞の修復を行う。しかし、肺の上皮細胞の運命がどのように代謝調節されているかは、ほとんど解明されていない。今回我々は、マウスの妊娠中に肺上皮細胞でミトコンドリアの電子伝達鎖複合体IのサブユニットNdufs2を欠失させると、出生後の肺胞形成の際に死に至ることを明らかにする。欠失のあるマウスでは、AT2細胞とAT1細胞の特性を持ち、移行細胞として知られている肥大型の細胞が見られた。哺乳類のミトコンドリア複合体Iは45個のサブユニットからなり、NAD+を再生し、プロトンをくみ出す。NAD+を再生するがプロトンのくみ出しはしない酵母NADHデヒドロゲナーゼ(NDI1)タンパク質を条件的に発現させると、それだけで肺胞発生の異常を修正するのに十分であり、死亡することがなくなった。単一細胞RNA塩基配列解読によって、移行細胞では統合的ストレス応答(ISR)遺伝子が増加していることが判明した。ISR阻害剤あるいはNAD+前駆体を投与すると、上皮細胞でISR遺伝子シグネチャーが減少し、ミトコンドリア複合体Iの機能がなくても死亡が一部で回避できた。NAD+再生を維持する働きをするミトコンドリア電子伝達鎖複合体IIサブユニットのSdhdを肺上皮細胞特異的に欠失させると、ISRの高度な活性化や致死性が起こらなくなった。これらの知見から、出生後の肺胞形成の際にISRの有害な誘発を防ぐことによって細胞運命を方向付けるには、ミトコンドリア複合体Iに依存したNAD+の再生が必要条件であるという予想外の結果が明らかになった。

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