生態学:持続可能性に資する自然の多様な価値
Nature 620, 7975 doi: 10.1038/s41586-023-06406-9
人間の幸福のための生態系サービスの評価に関する基本的な文献の発表から25年がたつが、世界的な生物多様性の危機に対する取り組みには、現在でも自然の多様な価値を政策意思決定に組み込むことに対する障壁が立ちはだかっている。そのような障壁には、現在の規範や法規により裏付けられた財産権などの強力な利害関係が含まれており、これらが、誰の価値、そしてどの自然の価値に従うかを決めている。自然がなぜ、どのように(過小)評価されているのかについて理解を深めることが、これまで以上に急務となっている。昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)や国連の持続可能な開発目標(SGDs)など、自然の価値を行動に組み込むための合意があるにもかかわらず、環境や開発に関する政策の主流は、今なお一部の価値、とりわけ市場に関連する価値を優先しており、それ以外の自然との関わり方や自然からの受益は無視されている。おそらく、生物多様性の喪失と気候変動、パンデミック発生、社会環境的不公正が絡み合った危機の根底には、「価値観の危機」があると考えられる。5万点を超える科学文献、政策文書、先住民や地域の知識源に基づいて、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学–政策プラットフォーム(IPBES)は、自然の多様な価値と評価法に関する知識を評価し、それらが政策立案や、意思決定へのより完全な組み込みで果たす役割に関する知見を得た。この論拠を用いることで、評価法の改善と普及の障壁への対処を行い、究極的にはより公正(すなわち、世代間および世代内の公平性を含め、人間と自然を正当に扱う)で、持続可能な未来に向けた革新的な変化を活用するための、価値本位な手法の組み合わせが提案された。

