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微生物学:小タンパク質モジュールが多重溶原化の際のプロファージの運命を決定する

Nature 620, 7974 doi: 10.1038/s41586-023-06376-y

生物圏のほとんどの細菌は、複数のプロファージを含んだ多重溶原菌であると予測されている。実験系では、溶原化から溶菌へのプロファージの誘発は、ほぼ普遍的にDNA損傷物質によって引き起こされる。従って、共存するプロファージが同一の引き金に応答するのであれば、これらが細胞資源を巡ってどのように競合するかは分かっていない。今回我々は、DNA損傷の合図に非依存的に、プロファージの誘発を制御する調節モジュールを発見した。このモジュールは、塩基配列レベルではほとんど類似していないが、小タンパク質(small protein)をコードする隣接遺伝子の発現を活性化する転写因子を持つという調節論理が共通している。小タンパク質は溶菌のマスターリプレッサーを不活性化し、これがプロファージの誘発につながる。2種類のプロファージを含む多重溶原菌がDNA損傷に曝露されると、ファージの混合集団が放出された。単一細胞解析から、この混合ファージは、どちらか一方あるいは両方のファージを産生する細胞の個別のサブセットの結果であることが明らかになった。対照的に、DNA損傷非依存的モジュールによる誘発では、細胞はその特定の合図に感受性のファージのみを産生する。従って、検討した多重溶原菌では、溶菌を誘導するのに用いる刺激によってファージの生産性が決定される。自然の生息環境には強力なDNA損傷物質が存在しないことを考慮すると、溶菌のためにファージにコードされた追加の感知経路が、ファージ–宿主の生物学的性質やプロファージ間の競合において基本的な役割を担っている可能性がある。

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