人類学:広範な家系図から明らかになった新石器時代の地域社会の社会構成
Nature 620, 7974 doi: 10.1038/s41586-023-06350-8
社会人類学や民族学の研究によって、現存する集団における親族関係のシステムや、接触と交流のネットワークが明らかにされている。しかし、先史時代の社会に関しては、そうしたシステムは生物学的および文化的な遺物から間接的に研究することしかできない。安定同位体データ、性別、死亡年齢からは、埋葬社会の人口構成に関する手掛かりが得られ、地域内外の小児期の特徴が明らかになり、考古遺伝学データからは、個人間の生物学的関係を再構築できることから家系図の構築が可能になり、証拠の組み合わせからは、先史時代の社会における親族関係的な慣行や居住のパターンに関する情報が得られる。本論文で我々は、ヨーロッパ西部の新石器時代に当たる紀元前4850~4500年頃の、フランス・ギュルジーの「les Noisats」遺跡で出土した100人を超える人々の古DNA、ストロンチウム同位体、出土状況のデータを報告する。この埋葬社会は、7世代にわたり、夫方居住的で父系的な2つの主要な家系によって遺伝的につながっており、女性は族外婚で、近隣の遺伝的に近縁な集団との交流を示す証拠が認められた。これらの家系と関連する個人と関連しない個人の微視的な人口構成からは、社会構造、生活状況、地域の占有に関してさらなる情報が得られた。異父母きょうだいが存在せず、成人した同父母きょうだいが多かったことから、この社会には安定した健康状態と協力的な社会ネットワークが存在し、これが出生率の高さと死亡率の低さを支えていたことが示唆された。世代ごとの年齢構成の差異とストロンチウム同位体分析結果は、この場所が使われたのはわずか数十年間であったことを示しており、ヨーロッパの新石器時代における移動式の定住的な農耕に関する新たな知見が得られた。

