構造生物学:マイコバクテリアの内在性タンパク質MCEである脂質輸送体の構造
Nature 620, 7973 doi: 10.1038/s41586-023-06366-0
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)がマクロファージ内で自己複製して結核を引き起こすには、宿主から多様な栄養素を集めなくてはならない。結核菌では、MCE(mammalian cell entry)タンパク質は重要な病原性因子であり、このタンパク質は大きな遺伝子クラスターにコードされていて、マイコバクテリアの不透過性の細胞外被を越える脂肪酸やコレステロールの輸送に関わっている。積み荷がこの障壁を通って輸送される仕組みについてはほとんど分かっておらず、マイコバクテリアのmce遺伝子クラスターにコードされた10個程度のタンパク質が集合し、細菌外被を越える積み荷輸送を行う機構も不明である。今回我々は、結核菌の非病原性近縁種であるスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)の内在性Mce1である脂質取り込み機械のクライオ電子顕微鏡構造を報告する。この構造から、Mce1システムのタンパク質が集合して、伸びたABC輸送複合体を形成する仕組みが明らかになった。この輸送複合体は、細菌外被を通過するのに十分な長さである。Mce1複合体は、曲がった針のようなドメイン(このタンパク質について以前に報告された構造とは関係ないように見える)がほとんどを占めていて、これがペリプラズムを介した脂質輸送のための保護された疎水性経路を形成している。我々の構造学的データにより、Mce1複合体の1個のサブユニットの存在が、クライオ電子顕微鏡とAlphaFold2を組み合わせることで明らかになり、LucBと命名された。我々のデータは、Mce1が仲介するマイコバクテリア細胞外被を介した脂質取り込みの構造学的モデルにつながる。

