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化学生物学:がんドライバーを再配線してアポトーシスを活性化する

Nature 620, 7973 doi: 10.1038/s41586-023-06348-2

ヒトの多くのがんでは、悪性細胞の増殖、生存、浸潤、転移を促進するドライバー遺伝子が特定されている。また、それらとは独立の研究によって、個体の利益のために細胞を除去する細胞死経路も見つかっている。こうした細胞死経路とドライバー変異が共存していることは、近接を誘導する化合物(CIP:chemical inducers of proximity)を用いれば、がんドライバーを再配線して細胞死を活性化できる可能性を示唆している。今回我々は、転写/エピジェネティックCIP(TCIP)と命名した新しいクラスの分子が、内在性のがんドライバーあるいは下流の転写因子を細胞死遺伝子のプロモーターへ誘導して、これらの遺伝子の発現を活性化することを報告する。我々は、転写因子であるBCL6(B cell lymphoma 6)の調節が失われた、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に着目した。BCL6は細胞死遺伝子のプロモーターに結合し、それらの発現をエピジェネティックに抑制する。我々は、BCL6に結合する小分子を、発がんプログラムに関与するBRD4のような転写アクチベーターに結合する小分子と共有結合で連結することにより、TCIPを作製した。最も強力な分子TCIP1は、15分以内にゲノムのBCL6結合部位に対するBRD4の結合を50%増加させて、標的とするアポトーシス促進性遺伝子の転写伸長を引き起こす一方、エンハンサーへのBRD4結合の減少はわずか10%であり、これは機能獲得機構を反映している。TCIP1は1〜10 nMのEC50で、化学療法耐性のTP53変異型細胞株も含め、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株を72時間で細胞死させ、細胞特異的および組織特異的な効果を示し、転写に本来備わる組み合わせによる特異性を実現した。このTCIPの概念は、再生医療や発達障害のための遺伝子発現調節にも治療応用できる。

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