Article

惑星科学:初期の火星の持続的な湿潤–乾燥サイクル

Nature 620, 7973 doi: 10.1038/s41586-023-06220-3

初期の火星に永続的に湿潤な地表環境が存在したことはよく知られているが、初期の水文気候における短期間の一時的事象についてはほとんど知られていない。このような短期間の変動によって駆動される堆積後の過程により、さまざまな構造が形成された可能性があるが、そうした構造が堆積物記録に保存されることはまれである。地質学的な制約が不完全であるため、初期の火星の水循環と気候に関する全球モデルからは、さまざまに異なる結果が得られている。本論文で我々は、初期の火星表面の環境において、高頻度の湿潤–乾燥サイクルが生じていたことを示す、ゲールクレーターでの探査ローバー、キュリオシティによる観測結果について報告する。我々は、硫酸塩に富んだ、数センチメートル規模の、Y字形に結合する露出した多角形の隆起線状構造を観測した。これは、一定の強度の湿潤–乾燥サイクルの繰り返しによって、真新しい泥の中に形成された亀裂を記録している。今回の知見は、衝突や火山によって引き起こされる散発的な水文学的活動ではなく、初期の火星には持続的で周期的な、季節的である可能性もある気候が存在したことを示している。さらに、湿潤–乾燥サイクルは前生物的な重合を促進し得るため、蒸発残留物からなるゲール盆地は、このような過程に特に寄与していた可能性がある。今回観測された多角形のパターンは、スメクタイト粘土から硫酸塩を含む地層への移行という、全球規模で分布する鉱物の移行と物理的および時間的に関連している。これは、ノアキス紀からヘスペリア紀への移行期(38億〜36億年前)に、地球に似た気候レジームと、前生物的進化に適した表面環境が維持されていた可能性があることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度