Article
分子進化学:ヒト脳の進化において細胞の複雑性を促進した分子的特徴
Nature 620, 7972 doi: 10.1038/s41586-023-06338-4
ヒト脳に固有の機能性には、ヒト特異的なゲノム変化が関与している。ヒト脳に見られる細胞の不均一性と、遺伝子発現の複雑な調節は、ヒト特異的な分子的特徴を細胞分解能で明らかにすることの必要性を浮き彫りにしている。今回我々は、ヒト、チンパンジーおよびアカゲザルの後帯状皮質の脳組織について、単一核RNA塩基配列解読と単一核ATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin with sequencing)のデータセットを解析した。その結果、皮質組織全体での、オリゴデンドロサイト前駆細胞のヒト特異的な増加と、成熟したオリゴデンドロサイトのヒト特異的な減少が明らかになった。ヒト特異的な調節変化は、オリゴデンドロサイト前駆細胞で加速しており、この割合の変化に関連する可能性のある主要な生物学的経路が明らかになった。また、ニューロンサブタイプにおけるヒト特異的な調節変化が突き止められ、FOXP2のヒト特異的な発現上昇が、2つのニューロンサブタイプのみで見られることが明らかになった。さらに、ヒト特異的なクロマチン接近可能性の変化と関連する、数百の新たなヒト加速ゲノム領域も特定された。我々のデータからは、FOS::JUNモチーフとFOXモチーフが、興奮性ニューロンサブタイプのヒト特異的な接近可能クロマチン領域に濃縮されていることも明らかになった。まとめると今回の結果は、ヒト脳の進化的新機軸の根底にあるいくつかの新たな機構を、細胞タイプの分解能で明らかにしている。

