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免疫学:ありふれたHLA対立遺伝子の1つが無症候性SARS-CoV-2感染に関連する

Nature 620, 7972 doi: 10.1038/s41586-023-06331-x

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の少なくとも20%は無症候性であることが、研究により実証されている。世界的な取り組みの大部分は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症疾患に着目してきたが、無症候性感染を調べることで、迅速なウイルス除去を促す早期の免疫学的特徴を考えるためのユニークな機会が得られる。今回我々は、ヒト白血球抗原(HLA)座位の多様性が無症候性感染を担う過程の基盤となっていると仮定して、COVID-19の症状と転帰を追跡するために設計されたスマートフォンを用いた研究において、高分解能のHLAジェノタイピングデータが利用可能な2万9947人を登録した。我々の発見コホート(n = 1428)は、SARS-CoV-2陽性の検査結果が報告されたワクチン非接種者から構成される。5つのHLA座位と疾患経過との関連について調べたところ、HLA-B*15:01と無症候性感染との間に強い関連が見つかり、これは2つの独立したコホートでも観察された。この遺伝的関連は、既存のT細胞免疫に起因することが示唆されるため、我々はHLA-B*15:01保有者のパンデミック(世界的大流行)前の試料から採取したT細胞が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に由来するNQKLIANQFという免疫優性ペプチドに反応したことを示す。この反応性T細胞の大部分は記憶表現型を示し、高度に多機能であり、季節性コロナウイルス由来のペプチドに交差反応性を示した。HLA-B*15:01–ペプチド複合体の結晶構造からは、ペプチドのNQKLIANQFとNQKLIANAF(OC43-CoVおよびHKU1-CoV由来)は、HLA-B*15:01を安定化し、HLA-B*15:01に提示される能力が同等であることが明らかになった。また我々は、これらのペプチドの構造的な類似性が、高親和性パブリックT細胞受容体のT細胞交差反応性の基礎となっていることを示し、HLA-B*15:01を介した既存の免疫の分子基盤を提示する。

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