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免疫学:PLSCR1はSARS-CoV-2感染に対する細胞自律的な防御因子である

Nature 619, 7971 doi: 10.1038/s41586-023-06322-y

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する防御免疫を理解することは、将来的なパンデミック(世界的大流行)に対する備えを促し、ヒト集団で新たな重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株が出現するのを防ぐ。中和抗体は広く研究されてきたが、COVID-19の防御能のある患者と重症患者を比較した大規模エキソーム塩基配列解読に基づいた、細胞自律的な局所的防御の研究も重要である。今回我々は、インターフェロンγ(IFNγ)刺激前後のヒト肺上皮と肝細胞に対するゲノム規模CRISPR–Cas9並行スクリーニングにおいて、リン脂質スクランブラーゼ1(PLSCR1)がSARS-CoV-2の生ウイルス感染に対する強力な細胞自律的制限因子であることを明らかにする。IFNγによって誘導されたPLSCR1は、SARS-CoV-2のUSA-WA1/2020株を制限しただけでなく、デルタ株B.1.617.2やオミクロン株BA.1系統に対しても有効であった。そのロバストな活性は、他の高病原性コロナウイルスにも効果があり、コウモリやマウスでも機能的に保存されており、また、エンドサイトーシスによる膜融合経路とTMPRSS2依存的な膜融合経路の両方でSARS-CoV-2の取り込みを阻害した。W-4Pi-SMS(whole-cell 4Pi single-molecule switching)ナノスコピーと2成分ナノレポーターアッセイを組み合わせることで、PLSCR1がSARS-CoV-2を含む小胞を直接標的とし、スパイクを介した膜融合やウイルスの脱出を抑制することが分かった。この膜融合阻害には、PLSCR1の脂質スクランブラーゼ活性ではなく、C末端βバレルドメインが不可欠であった。我々は、COVIDに関連するPLSCR1の変異が、感受性のある人々の一部で見つかったことを報告するとともに、機構研究では、ウイルスRNAが宿主細胞の細胞質ゾルへ放出される前の侵入段階後期を阻害する抗コロナウイルスタンパク質を明らかにした。

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