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がん:p53は肺がんを抑制する際にAT1の分化プログラムを支配する

Nature 619, 7971 doi: 10.1038/s41586-023-06253-8

肺がんは、世界中でがんによる死亡の主たる原因となっている。腫瘍抑制遺伝子TP53の変異は、肺腺がん(LUAD)の50%で起こっており予後不良と関連付けられているが、p53が肺腺がんの発生をどのようにして抑制しているのかは明らかでない。今回我々は、p53は細胞状態の支配、具体的にはI型肺胞(AT1)の分化促進によって肺腺がんを抑制していることを示す。II型肺胞(AT2)細胞で発がん性Krasと、ヌル、野生型もしくはハイパーモルフのTrp53対立遺伝子を発現するマウスを用いて、肺腺がんのイニシエーションとプログレッションに対するp53の段階的な影響を観察した。肺腺がん細胞のRNA塩基配列解読とATAC塩基配列解読によって、腫瘍抑制中にin vivoでp53が誘導するAT1分化プログラムが明らかになり、これは直接的なDNA結合、クロマチンリモデリングとAT1細胞に特徴的な遺伝子の誘導を介することが分かった。また、単一細胞トランスクリプトーム解析から、p53は肺腺がんの進化中にAT1の分化を促進することが明らかになった。これは移行状態の細胞でのp53の働きによるもので、この状態は肺胞の損傷修復でのAT2からAT1への細胞分化の間に見られる一過性の中間段階に類似している。p53が不活性化されると、これらの移行中のがん細胞が維持される不適切な状態が続くことになり、これに伴って肺腺がんのプログレッションと関連する特徴である、増殖シグナル伝達の亢進と肺細胞系譜アイデンティティーからの逸脱が起こる。Trp53野生型マウスとTrp53ヌルマウスの解析から、p53は損傷後の肺胞再生も指示していて、これはAT2細胞の自己再生の調節とAT1細胞への移行的な細胞分化の促進によることが明らかになった。まとめると、これらの知見はp53を介した肺腺がん抑制の機構を明らかにするもので、この機構ではp53が肺胞の分化を支配しており、腫瘍抑制は損傷後の組織修復の調整でのp53の基本的役割を反映していると考えられる。

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