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構造生物学:SARS-CoV-2融合後の膜内にあるスパイクタンパク質のクライオ電子顕微鏡構造

Nature 619, 7969 doi: 10.1038/s41586-023-06273-4

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が宿主細胞に侵入するには、ウイルスにコードされているスパイクタンパク質が、融合前のコンホメーション(切断後に準安定状態になる)から、より低いエネルギーで安定な融合後のコンホメーションへと折りたたみ直される必要がある。この移行によって、ウイルスと標的細胞の膜との融合の速度論的障壁が克服される。今回我々は、融合反応で生じる1枚の膜に当たる脂質二重層内にある融合後の無傷状態のスパイクタンパク質のクライオ電子顕微鏡構造を明らかにした。この構造から、融合ペプチドと膜貫通アンカーを含む機能的に極めて重要な膜結合セグメントの構造的輪郭が得られた。膜内部にある融合ペプチドは、脂質二重層をほぼ完全に貫くヘアピン様のくさびを形成し、膜貫通セグメントは膜融合の最終段階で融合ペプチドの周りに巻き付いている。これらの結果によって、膜環境中でのスパイクタンパク質についての理解が進み、治療介入戦略を開発する道筋が見えてくるだろう。

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