材料科学:弾性セラミックプラスチック合成のための有機–無機・共有結合–イオン結合性分子
Nature 619, 7969 doi: 10.1038/s41586-023-06117-1
有機–無機ハイブリッド材料は、機械材料、光学材料、電子材料、生体材料として不可欠な役割を果たしてきたが、単離された有機–無機ハイブリッド分子(現時点では共有結合化合物に限られている)は、分子構築において有機共有結合と無機イオン結合の挙動がはっきりと異なるため、ハイブリッド材料の合成にはほとんど用いられていない。今回我々は、1つの分子内で一般的な共有結合とイオン結合を一体化して、ハイブリッド材料のボトムアップ合成に用いることのできる、有機–無機ハイブリッド分子を作り出した。酸–塩基反応を通して共有結合性の有機チオクト酸(TA)とイオン結合性の無機炭酸カルシウムオリゴマー(CCO)を結合させることで、TA2Ca(CaCO3)2という分子式に代表されるTA–CCOハイブリッド分子が得られた。有機TAセグメントと無機CCOセグメントの共重合を伴う二重の反応性によって、それぞれ共有結合性ネットワークとイオン結合性ネットワークが生成される。2つのネットワークはTA–CCO複合体を通して相互に接続されて、得られたハイブリッド材料であるポリ(TA–CCO)の中に共有結合性とイオン結合性の双連続構造を形成し、これによって、矛盾する機械的特性が1つに統合される。イオン結合性ネットワークにおけるCa2+–CO32−結合と共有結合性ネットワークにおけるS–S結合は可逆的な結合なため、熱的安定性を維持しつつ材料の再加工性とプラスチックのような成形性が確保される。ポリ(TA–CCO)内におけるセラミック様挙動とゴム様挙動とプラスチック様挙動の共存により、現在の材料分類の枠を超えて「弾性セラミックプラスチック」が生み出された。今回の有機–無機ハイブリッド分子のボトムアップ合成は、ハイブリッド材料の分子エンジニアリングへの実現可能な経路をもたらし、有機–無機ハイブリッド材料の作製に用いられる古典的方法を補うものである。

