植物科学:昆虫に対する自己調節型の宿主植物抵抗性を制御する三要素の可変抵抗器
Nature 618, 7966 doi: 10.1038/s41586-023-06197-z
植物は、受容体様キナーゼとヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート受容体を用いることで、植食者に対する宿主植物抵抗性(HPR)を付与する。このような植食性昆虫とそれらの宿主との間の遺伝子対遺伝子相互作用は50年以上前から提唱されているが、HPRの基盤となる分子機構や細胞機構は、昆虫の非病原性エフェクターの正体や感知機構が不明なため、いまだに解明されていない。今回我々は、植物の免疫受容体が認識する昆虫の唾液タンパク質を特定した。トビイロウンカ(Nilaparvata lugens Stål)由来のBISP(BPH14-interacting salivary protein)は、摂食の際にイネ(Oryza sativa)の内部に分泌される。感受性のイネでは、BISPはイネのRLCK185(OsRLCK185;以降、Osはイネに関連するタンパク質や遺伝子を示す)を標的として基本的防御を抑制する。抵抗性のイネでは、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート受容体BPH14が、BISPに直接結合してHPRを活性化する。Bph14を介した免疫の構成的活性化は、植物の生長や生産力に有害である。Bph14を介したHPRの微調整は、BISPとBPH14が選択的オートファジー積み荷受容体OsNBR1に直接結合することによって行われ、OsNBR1がBISPをOsATG8へと運んで分解させるため、結果としてオートファジーがBISPレベルを制御する。Bph14を持つイネでは、トビイロウンカによる摂食が終了すると、オートファジーはHPRを下方調節して、細胞の恒常性を回復させる。本研究では、植物の免疫受容体によって感知される昆虫の唾液タンパク質を特定し、高収量の昆虫抵抗性作物開発に役立つ可能性のある三者間相互作用系を発見した。

