Article

細胞生物学:細胞質ゾルの監視機構がミトコンドリアUPRを活性化する

Nature 618, 7966 doi: 10.1038/s41586-023-06142-0

ミトコンドリアストレス応答(UPRmt)は、ミトコンドリアをタンパク質毒性による損傷から守るために不可欠で、これは、タンパク質恒常性を回復させるために核内の専用の転写応答を活性化することによって起こる。しかし、ミトコンドリアでのミスフォールディングストレス(MMS)についての情報が、ヒトUPRmtの一部として核へと伝達される仕組みについては、いまだに明らかになっていない。今回我々は、UPRmtシグナル伝達は、ミトコンドリアの活性酸素種(mtROS)と、細胞質ゾルでのミトコンドリアタンパク質前駆体(c-mtProt)の蓄積という細胞質ゾル内での2種類のシグナルの放出によって引き起こされることを示す。プロテオミクスの手法と遺伝学的手法を組み合わせることにより、MMSが細胞質ゾルへのmtROSの放出を引き起こすことが明らかになった。これと並行して、MMSはミトコンドリアタンパク質の搬入障害につながり、これがc-mtProt蓄積の原因となる。この両方のシグナルが合わさってUPRmtが活性化される。放出されたmtROSは細胞質ゾルのHSP40タンパク質DNAJA1を酸化し、それによって細胞質ゾルのHSP70のc-mtProtへの動員が促進される。その結果、HSP70がHSF1を遊離させ、それが核へと移動してUPRmt遺伝子群の転写を活性化する。これらをまとめると、別々のミトコンドリアストレスシグナルを統合してUPRmtを開始させる、細胞質ゾル中の高度に制御された監視機構の存在が明らかになった。これらの知見から、ミトコンドリアと細胞質ゾルのタンパク質恒常性の連係が明らかになり、ヒト細胞でのUPRmtシグナル伝達に関する分子レベルでの知見が得られた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度