Article

細胞生物学:軸糸の構造から明らかになった機械的調節機構と疾患の機序

Nature 618, 7965 doi: 10.1038/s41586-023-06140-2

運動性の繊毛と鞭毛は、細胞表面で打つような動きを律動的に繰り返して液体の流れを作り出し、精子や単細胞真核生物はこれによって泳ぎが可能になる。ヒトでは、繊毛の運動性障害は男性不妊や原発性繊毛運動不全症(PCD)と呼ばれる先天性疾患につながることがあり、PCDでは繊毛による粘液の除去ができなくなり、これが慢性の呼吸器感染症の原因となる。繊毛の運動は軸糸と呼ばれる分子機械によって起こり、軸糸は微小管、ATPを原動力とするダイニンモーター、調節性複合体から構成されている。軸糸の原子モデルは、そのサイズと複雑さのためにこれまで作られておらず、軸糸が機能する仕組みの解明が妨げられてきた。今回我々は、人工知能によって可能になった構造予測とクライオ電子顕微鏡の最近の進歩を活用して、藻類であるコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の鞭毛とヒトの呼吸器繊毛から得た軸糸について、96 nm反復モジュールの構造を決定した。この原子モデルから、軸糸の保存と特殊化、ダイニンとその調節因子の間の相互接続性、軸糸の構造の周期性維持機構について、手掛かりが得られた。機械調節複合体とそれに関連する軸糸ダイニンモーターでの相関したコンホメーション変化が、以前から提案されてきた繊毛の運動性を調節するためのメカノトランスダクション経路の機構であると考えられる。4人のPCD患者に由来する呼吸器繊毛のダブレット微小管の構造から、個々の結合因子の喪失が周期的反復構造を選択的に消失させ得る仕組みが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度