腫瘍免疫学:α2アドレナリン受容体の活性化が引き金となる腫瘍の免疫拒絶
Nature 618, 7965 doi: 10.1038/s41586-023-06110-8
抗体を用いた免疫チェックポイント阻害(ICB)に基づく免疫療法は、腫瘍の拒絶を引き起こし、さまざまなタイプのがんの患者に臨床上の恩恵をもたらす。しかし、腫瘍は免疫拒絶に抵抗性を示すことが多い。腫瘍の応答率を上げるために現在行われている試みは、ICBと化合物との併用に基づく方法で、腫瘍微小環境中での免疫抑制軽減を目的としているが、通常、こうした化合物は単剤療法でほとんど効果を示さない。今回我々は、α2アドレナリン受容体(α2-AR)のアゴニストを単剤療法として用いると、複数の免疫正常腫瘍モデル(ICB抵抗性モデルも含む)では非常に強い抗腫瘍活性を示すが、免疫不全モデルでは抗腫瘍活性を示さないことを明らかにする。また、ヒトリンパ球を再構築させたマウスに移植したヒト腫瘍異種移植片でも、明らかな効果が認められた。α2-ARアゴニストの抗腫瘍効果は、α2-ARアンタゴニストによって解消され、Adra2a(α2a-ARをコードする)ノックアウトマウスでは見られなかった。これは、腫瘍細胞ではなく、宿主細胞に対するオンターゲットの活性であることを実証している。投与を受けたマウスの腫瘍では、Tリンパ球の浸潤が増加し、骨髄系抑制細胞は減少し、アポトーシスが増えていた。単一細胞RNA塩基配列解読解析によって、マクロファージとT細胞で自然免疫応答経路と適応免疫応答経路が上方調節されていることが判明した。α2-ARアゴニストが抗腫瘍効果を示すには、CD4+ Tリンパ球、CD8+ Tリンパ球、マクロファージが必要であった。Adra2aノックアウトマウスでの再構築を検討したところ、アゴニストがマクロファージに直接作用して、マクロファージのTリンパ球刺激能を亢進させることが分かった。これらの結果は、α2-ARアゴニスト(一部は臨床利用が可能)は、がんの免疫療法の臨床効果を大幅に改善する可能性があることを示している。

