Article

極低温気体:1Dボース気体におけるハイドロダイナミゼーションと局所的な初期熱化の観測

Nature 618, 7965 doi: 10.1038/s41586-023-05979-9

流体力学は、相対論的重イオン衝突実験を、局所熱平衡が確立するはるか前に正確に記述する。実現可能な最速の時間スケールで生じる、流体力学的状況のこの予想外に急速な開始は、ハイドロダイナミゼーション(hydrodynamization)と呼ばれる。この現象は、相互作用する量子系が、基底状態のエネルギー密度よりずっと大きいエネルギー密度でクエンチされると生じる。ハイドロダイナミゼーションが生じている間、エネルギーは、大きく異なるさまざまなエネルギースケールにわたって再分配される。ハイドロダイナミゼーションは、運動量モード間の局所平衡化、すなわち、近可積分系では一般化ギブスアンサンブルへの局所的な初期熱化、非可積分系では局所的な熱化であるに先立って生じる。量子力学の多くの理論が局所的な初期熱化を仮定しているものの、これに関連する時間スケールは実験的に調べられていない。今回我々は、一次元(1D)ボース気体のアレイを用いて、ハイドロダイナミゼーションと局所的な初期熱化の両方を直接観測した。ブラッグ散乱パルスの印加後、離れた運動量モード間でのエネルギーの速やかな再分配においてハイドロダイナミゼーションがはっきりと表れ、これはブラッグピークエネルギーに関連した時間スケールで生じた。局所的な初期熱化は、近傍の運動量モード間の占有のより遅い再分配において見られた。我々は、今回の系における局所的な初期熱化の時間スケールが、関与する運動量に反比例することを見いだした。ハイドロダイナミゼーションと局所的な初期熱化が生じている間は、既存の理論によって今回の実験を定量的にモデル化することはできない。Tonks–Girardeau極限での厳密な理論計算では、定性的に同様の特徴が示された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度