Review
がん:がんの神経科学
Nature 618, 7965 doi: 10.1038/s41586-023-05968-y
神経系は、生涯を通じて組織の幹・前駆細胞集団を調節している。神経系は発生での役割と並行して、発がんから悪性増殖や転移性拡散に至るまで、がんの重要な調節因子としても新たに注目されている。広範な悪性腫瘍のさまざまな前臨床モデルにおいて、神経系の活動ががんのイニシエーションを制御したり、がんのプログレッションと転移に強力な影響を及ぼしたりし得ることが実証されている。神経系ががんのプログレッションを調節できるのと同様に、がんもまた神経系の構造と機能を再構築し、乗っ取ることができる。神経系とがんの間の相互作用は、局所的な腫瘍微小環境内および全身性の両方で起こる。ニューロンとグリア細胞は、パラクリン因子や、場合によってはニューロンとがん細胞の間のシナプスを介して、腫瘍微小環境内の悪性腫瘍細胞と直接コミュニケーションを行う。さらに、循環血中のシグナルを通じて、あるいは免疫細胞のトラフィッキングと機能に影響を及ぼすことで、間接的な相互作用も離れた部位で起こる。このような神経系、免疫系、がんの間のクロストークは、全身性および局所的な腫瘍微小環境内の両方で、腫瘍促進性の炎症と抗がん免疫を調節している。がんの神経科学的特性の解明には、神経科学、発生生物学、免疫学、がん生物学といった諸分野間の学際的な協力が必要であり、こうした取り組みによって最難治性悪性腫瘍の多くに対して有効な治療法が開発される可能性がある。

