神経科学:ミエリンの機能不全はアルツハイマー病モデルにおいてアミロイドβの沈着を促進する
Nature 618, 7964 doi: 10.1038/s41586-023-06120-6
アルツハイマー病(AD)は認知症の主要因であり、その発症は加齢に伴って急激に増加するが、加齢がその主要なリスク因子である理由については、まだほとんど分かっていない。脳の加齢は、オリゴデンドロサイトとミエリン鞘の構造的安定性に影響を与え、後者は二次的な神経炎症と関連している。オリゴデンドロサイトは、軸索のエネルギー代謝とニューロンの恒常性を支えているため、ミエリンの安定性の喪失は、ADの中心的な神経病理学的特徴である、ニューロンでのアミロイドβ(Aβ)沈着の上流のリスク因子である可能性が考えられた。本研究で我々は、ミエリン機能不全と脱髄性損傷の遺伝的経路が、ADマウスモデルにおけるアミロイド沈着の強力な駆動因子であることを明らかにした。そのメカニズムは、ミエリンの機能不全が、軸索肥大部内にAβ産生装置を蓄積させ、皮質のアミロイド前駆体タンパク質の切断を増加させるというものである。興味深いことに、ADマウスモデルでは、ミエリンの機能不全がミクログリアの総数を増加させるのに対して、アミロイド斑を取り囲むミクログリアが減少していた。さらに、細胞集団レベル、および、単一細胞レベルのトランスクリプトーム解析により、ミエリン異常を持つADマウスモデルでは、ミエリン損傷とアミロイド斑それぞれに対して高度に類似しつつも特異的な疾患関連ミクログリア(DAM)シグネチャーの同時誘導が見られた。通常はアミロイド斑を除去するアミロイド病関連ミクログリア(DAM)がうまく誘導された場合でも、近傍にミエリン損傷があるとその除去能は低下するようである。我々の観測結果は、加齢依存的なミエリンの構造異常が、Aβ斑の形成を直接的および間接的に促進するために、ADの上流リスク因子となっているという作業仮説を支持する。従って、オリゴデンドロサイトの恒常性とミエリンの安定性の改善が、ADの発症と進行を遅らせるための有望な標的となり得る。

