がん:腫瘍の細胞外小胞・微粒子は肝臓の代謝機能障害を誘導する
Nature 618, 7964 doi: 10.1038/s41586-023-06114-4
がんは転移の標的となる器官の他にも、多数の器官の機能を変化させる。今回我々は、肝外転移のあるマウスモデルと患者において、炎症と脂肪肝および代謝調節異常は全身性の影響を受けた肝臓の特徴であることを示す。腫瘍由来の細胞外小胞・微粒子(EVP:extracellular vesicles and particles)は、がんによって誘導される肝臓再プログラム化の重要なメディエーターであり、Rab27aの枯渇により腫瘍EVPの分泌を減少させると、この再プログラム化を元に戻せることが明らかになった。全てのEVP亜集団(エキソソームと主にエキソメア)は、肝機能の調節不全を引き起こす可能性がある。腫瘍EVPの積み荷の脂肪酸(特にパルミチン酸)は、クッパー細胞による腫瘍壊死因子(TNF)の分泌を誘導することで、炎症促進性の微小環境を作り出し、脂肪酸代謝と酸化的リン酸化を抑制し、脂肪肝の形成を促進する。また、クッパー細胞の除去もしくはTNFの阻害は、腫瘍誘導性の脂肪肝形成を著しく低下させた。腫瘍の移植、あるいは腫瘍EVPの事前投与は、シトクロムP450遺伝子の発現を低下させ、TNFに依存する様式で薬剤代謝を低下させた。膵臓がん患者の腫瘍の存在しない肝臓(後に肝外転移を発症する)で診断時に脂肪肝とシトクロムP450発現低下が観察されたことは、我々の知見の臨床との関連性をはっきり示している。腫瘍EVPの周辺環境への影響が、化学療法の副作用(骨髄抑制や心毒性など)を増強することは、腫瘍由来EVPによる肝臓代謝の再プログラム化が、がん患者の化学療法に対する耐容性を制限している可能性を示唆している。我々の結果は、腫瘍由来EVPが肝機能の調節異常を引き起こす仕組みを明らかにしており、これはTNF阻害と共に、脂肪肝形成を防ぎ、化学療法の有効性を高めるための標的となり得ることを示している。

