Article
微生物学:慢性感染と急性感染を調節する緑膿菌の小分子RNAの発見
Nature 618, 7964 doi: 10.1038/s41586-023-06111-7
病原性細菌は、異なる生活様式の間を切り替える能力により、さまざまな生態的ニッチで繁栄することができる。しかし、ヒト宿主内での病原性細菌の生活様式の変化は分子レベルではよく分かっていない。今回我々は、ヒト由来試料で細菌遺伝子の発現を直接調べることにより、日和見病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の慢性感染と急性感染の間の移行を調整する遺伝子を見いだし、これをsicXと命名した。sicXの発現レベルは、ヒトの慢性創傷や嚢胞性繊維症で見られる感染において発現する緑膿菌遺伝子の中で最も高かったが、実験室での標準的な増殖中ではその発現レベルは極めて低いことが分かった。我々は、sicXは、低酸素条件によって強力に誘導され、嫌気的なユビキノン生合成を転写後調節する小分子RNAをコードしていることを示す。緑膿菌でsicXを欠失させると、複数の哺乳類感染モデルにおいて慢性から急性への生活様式の切り替えが起こる。興味深いことに、sicXは、慢性感染が広がって急性敗血症が引き起こされる場合に最も発現が低下する遺伝子であるため、こうした慢性から急性への移行のバイオマーカーでもある。今回の研究は、緑膿菌の慢性感染から急性感染への切り換えの根底にある分子基盤についての数十年にわたる疑問を解決するものであり、酸素が急性致死性の主な環境的ドライバーであることを示唆している。

