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細胞生物学:心臓保護と神経再生のためのPI3Kαを活性化する小分子
Nature 618, 7963 doi: 10.1038/s41586-023-05972-2
キナーゼの直接的な活性化剤の作出を通して、キナーゼシグナル伝達の潜在的な有益効果を利用することは、いまだ医薬品開発の未開拓分野である。これはPI3Kシグナル伝達経路にも当てはまり、この経路は、がんや免疫調節不全など、PI3Kの過剰活性化を伴う疾患において、阻害剤によって広く標的とされている。今回我々は、増殖因子シグナル伝達の重要なエフェクターであるPI3Kαアイソフォームを活性化する小分子UCL-TRO-1938(以下、1938とする)を発見したことについて報告する。1938は、PI3Kα触媒サイクルの複数の段階を増強することにより、異なる機構でPI3Kαをアロステリックに活性化し、PI3Kα構造に局所的および全体的なコンホメーション変化を引き起こす。この化合物は、他のPI3Kアイソフォームや、さまざまなタンパク質キナーゼ・脂質キナーゼよりも、PI3Kαに対して選択的である。1938は、調べた全ての齧歯類細胞とヒト細胞で、PI3Kシグナル伝達を一過性に活性化し、その結果、増殖や神経突起伸長などの細胞応答が引き起こされた。齧歯類モデルでは、1938の急性投与により虚血再灌流傷害から心臓が保護され、局所投与後には神経挫滅後の神経再生が促進された。この研究は、PI3Kαシグナル伝達経路を直接調べる化学的ツールと、PI3K活性を調節する新しい手法を明らかにすることで、組織の保護と再生のために、これらの酵素を短期的な活性化によって標的化する治療の可能性を広げている。我々の知見は、キナーゼ活性化による治療効果という、これまでほとんど手付かずだった医薬品開発分野の可能性を示している。

