遺伝学:アフリカにおける人類の起源を支える弱い幹構造
Nature 617, 7962 doi: 10.1038/s41586-023-06055-y
ホモ・サピエンス(Homo sapiens)の起源がアフリカにあることに関しては大筋の合意があるが、アフリカ大陸内での分岐や移動に関する個別のモデルを巡ってはかなりの不確かさが存在する。モデルの改善は、化石やゲノムデータの不足の他、分岐年代に関する過去の推定値のばらつきによって阻まれている。今回我々は、迅速で複雑な人口動態推測のために最適化された、連鎖不平衡および多様性に基づく統計を検討することで、そうしたモデルの識別を試みた。我々は、東部と西部の人々、そして新規に全ゲノムの塩基配列解読が行われたアフリカ南部のナマ(コイサン)人44人を含む、アフリカ全域の集団に関して詳細な人口動態モデルを推測した。その結果、現代の集団構造を海洋酸素同位体ステージ5(MIS 5)までさかのぼらせる、網目状のアフリカのヒト集団史が推測された。現代集団において最初の集団分岐が起きたのは12万~13万5000年前で、それ以前には、2つ以上の弱く分化した祖先的なヒト属(Homo)集団間で数十万年にわたり遺伝子流動による関連があったと考えられる。こうした幹構造が弱いモデルによって、これまでアフリカにおける原始的なヒト族の寄与によるとされてきた、多型のパターンが説明される。原始的な遺伝子移入のモデルとは対照的に、我々は、共存していた祖先的集団に由来する遺骸化石は遺伝的および形態的に類似しているはずであり、現代のヒト集団間に推定されている遺伝的差異のわずか1〜4%が、幹を構成する集団間の遺伝的浮動に起因すると推測する。我々は、分岐年代に関する以前の推定値のばらつきがモデルの誤設定で説明されることを示し、太古の歴史に関してロバストな推測を行うには多様なモデルを検討することが重要であると主張する。

