進化学:巨視的多細胞性のde novo進化
Nature 617, 7962 doi: 10.1038/s41586-023-06052-1
初期の多細胞生物の系統は、必然的に比較的単純な細胞集団として始まったが、それらがどのようにして持続的な多細胞進化の能力を持つダーウィン進化論的な存在(Darwinian entity)になったのかについては、ほとんど知られていない。今回我々は、スノーフレーク酵母(Saccharomyces cerevisiae)のモデル系で、より大きな集団サイズを選択する多細胞性の長期進化実験を行い、多細胞性の進化の過程を調べた。酸素制限の歴史的重要性を踏まえ、現在継続中の我々の実験は、嫌気性、偏性好気性、混合栄養性の酵母という、3種類の代謝処理を行った酵母で構成されている。嫌気性処理を行ったスノーフレーク酵母は、600回の選択を経ると巨視的な集団に進化し、サイズは約2 × 104倍(ほぼミリメートル規模)、生物物理学的な強靱性は約104倍になったが、クローン性の多細胞生活環は維持されていた。この巨視化は生物物理学的な適応を介して起こったもので、最初は細胞充填のひずみを軽減し、次いで分枝のもつれを促進して細胞の結合の大半が壊れても細胞の集団が一体性を保っていられるようにする、細胞の漸進的な伸長という進化によっていた。対照的に、少量の酸素を巡って競合するスノーフレーク酵母は微視的なままであり、進化後もサイズはわずか6倍程度にしかならず、多細胞性のサイズ進化において酸素レベルが担う極めて重要な役割が裏付けられた。総合すると本研究は、個体性における継続的な進化的移行に関する独特な知見をもたらしており、単純な細胞集団が、漸進的ながら持続的な多細胞性進化を介して、基本的な生物物理学的制約をどのようにして克服するかを明らかにしている。

