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遺伝学:正常な大腸上皮における広範な体細胞L1レトロトランスポジション
Nature 617, 7961 doi: 10.1038/s41586-023-06046-z
ゲノムの変化は、個体の生涯を通じて体細胞に蓄積する。しかし、ヒトゲノムに広く存在する可動性遺伝因子である長鎖散在反復配列(L1)のレトロトランスポジションによって誘導される変異の全体像は、正常な細胞ではほとんど分かっていない。今回我々は、28人から採取した3つの異なる細胞タイプから確立した899の単一細胞クローンについて、全ゲノム塩基配列を調べた。その結果、1708の体細胞L1レトロトランスポジション事象が特定され、これらが大腸上皮で多く見られること、また、年齢と正の関係があることが分かった。L1の起源となるエレメントのフィンガープリンティングから、34のレトロトランスポジション能を持つL1が明らかになった。多次元解析からは、(1)体細胞L1レトロトランスポジションは初期の胚形成からかなりの割合で起こること、(2)起源エレメントのエピジェネティックなオン/オフは、初期の器官形成段階で優先的に決定されること、(3)レトロトランスポジション能を持つL1は、集団での対立遺伝子頻度が低いほど、レトロトランスポジション活性が高いこと、(4)細胞質のL1転写産物のうち、最終的に体細胞でレトロトランスポジションするのはごく一部であることが実証された。対応するがんの解析からはさらに、大腸での腫瘍形成過程では体細胞L1レトロトランスポジション率が大きく加速することが示唆された。まとめると今回の研究は、正常細胞における、L1レトロトランスポジションによって誘導される体細胞モザイクを明らかにするとともに、ヒトの生涯にわたる転位性遺伝因子のゲノムおよびエピゲノム調節についての手掛かりを示している。

