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免疫学:SARS-CoV-2オミクロン株のブースター接種はヒトにおいてde novoのB細胞応答を誘導する

Nature 617, 7961 doi: 10.1038/s41586-023-06025-4

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)mRNAワクチンの最初の2回連続接種は、ヒトにおいて強力な免疫原性があるが、高感染性変異株の出現によって追加接種と新しい変異株に対応したワクチン開発が必要となった。ヒトでのSARS-CoV-2ブースター(追加免疫)接種は、主に既存の記憶B細胞を動員する。しかし、追加接種が胚中心反応を誘導し、それによって再度応答したB細胞がさらに成熟できるかどうか、また変異株由来のワクチンが変異株特異的なエピトープに対する応答を誘導できるのかどうかは明らかにされていない。本論文で我々は、ブースター接種として、SARS-CoV-2従来株に対する1価のmRNAワクチン、あるいはB.1.351(ベータ株)とB.1.617.2(デルタ株)に対する2価のmRNAワクチンを用いると、ヒトにおいてロバストなスパイク特異的胚中心B細胞応答が誘導されることを示す。胚中心反応は少なくとも8週間持続し、有意により変異した抗原特異的な骨髄形質細胞や記憶B細胞区画を誘導した。SARS-CoV-2従来株のスパイクタンパク質ワクチン、ベータ株とデルタ株に対する2価ワクチン、あるいはオミクロン株BA.1系統をベースにした1価ワクチンのブースター接種者から単離した記憶B細胞に由来するスパイク結合性モノクローナル抗体は、主にSARS-CoV-2従来株のスパイクタンパク質を認識した。それでも、より標的化したソーティング法を使うと、mRNA-1273.529のブースター接種者から、SARS-CoV-2従来株のスパイクタンパク質ではなく、BA.1株のスパイクタンパク質を認識するモノクローナル抗体が単離された。これらの抗体は変異が少なく、スパイクタンパク質内の新たなエピトープを認識するため、これらはナイーブB細胞に由来することが示唆される。このように、ヒトにおけるSARS-CoV-2のブースター接種は、ロバストな胚中心B細胞応答を誘導し、変異株特異的なエピトープを標的とするde novoのB細胞応答を生じることができる。

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