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政治:COVID-19は米国刑事司法制度における人種格差を拡大した

Nature 617, 7960 doi: 10.1038/s41586-023-05980-2

米国の刑事司法制度は、世界で最も高い収監率の原因となっており、階級格差や人種格差といった特徴を示している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデッミック(世界的大流行)の最初の年に、米国の収監者数は少なくとも17%減少し、これは米国史上で最大かつ最速の刑務所人口減少であった。今回我々は、この減少が米国刑務所の人種構成にどのように影響したかを調べ、これらの動態を引き起こした可能性のある機構について検討した。全米50州とコロンビア特別区の刑務所人口統計に関する公的情報源からキュレートしたオリジナルのデータセットを用いて、米国刑務所人口減少により恩恵を受けたのは主に白人収監者であり、黒人とラテン系アメリカ人の収監者の割合は急増していたことを示す。この人種格差拡大のパターンはほぼ全ての州の刑務所で見られ、黒人収監者数が減少する中で白人収監者の割合が増加するという、2020年にCOVID-19が始まる前の10年にわたって見られた傾向を反転させた。これらの傾向の根底には多様な要因があるが、平均的な刑期の長さに見られる人種間の不均衡が主要因であることが分かった。まとめると本研究は、COVID-19に起因する混乱が、刑事司法制度における人種間の不平等を悪化させた仕組みを明らかにし、大量収監を持続させた主な推進力をはっきりと示している。データ駆動型の社会科学の研究機会を広げるために、我々は本研究の関連データをZenodoで公開している。

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