植物遺伝学:ブラシノステロイドシグナル伝達の抑制は半矮性コムギの穀粒収量を増加させる
Nature 617, 7959 doi: 10.1038/s41586-023-06023-6
現代のコムギ(Triticum aestivum L.)の緑の革命品種では、Reduced height-B1b(Rht-B1b)とRht-D1bの対立遺伝子によって、半矮性と耐倒伏性の植物構造がもたらされている。しかし、Rht-B1bとRht-D1bはいずれも、ジベレリンシグナル伝達の抑制因子をコードする機能獲得変異の対立遺伝子であり、植物の成長を安定的に抑制するが、窒素利用効率と登熟に悪影響を及ぼす。そのため、Rht-B1bまたはRht-D1bを有するコムギの緑の革命品種は通常、得られる穀粒が小さく、収量を維持するには窒素肥料の投入量を増やす必要がある。今回我々は、Rht-B1bやRht-D1bの対立遺伝子を必要としない半矮性コムギ品種の設計戦略を報告する。我々は、約500キロ塩基のハプロブロックの自然欠失によるRht-B1およびZnF-B(RING型E3リガーゼをコードする)の欠如が、植物構造がより小型で、圃場試験で収量を大きく改善させる(最高15.2%)半矮性植物を形成することを見いだした。さらなる遺伝子解析から、ZnF-Bの欠失は、ブラシノステロイド(BR)の感知を弱めることにより、Rht-B1bおよびRht-D1b対立遺伝子の非存在下で半矮性形質を誘導することが確認された。ZnFはBRシグナル伝達の活性化因子として作用して、BRシグナル伝達の抑制因子TaBKI1(BRI1 kinase inhibitor 1)のプロテアソームによる分解を促進し、ZnFの欠失はTaBKI1を安定化させてBRシグナル伝達を遮断する。今回の知見は、BRシグナル伝達の重要な調節因子を特定しただけでなく、コムギの生産を支えるためにBRシグナル伝達経路の操作によって高収量の半矮性コムギ品種の設計を行う、創造的な戦略を提示している。

