古生物学:アウストラロピテクス属の古生物学の再評価
Nature 617, 7959 doi: 10.1038/s41586-023-05957-1
1925年のタウング・チャイルド(Taung Child)に基づくアウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus)の命名は、人類進化に関する研究の新時代の到来を告げるものであり、当時のユーラシア中心的であった古人類学者たちの関心を、本意に反してだがアフリカへと向けさせた。100年近くを経た現在、アフリカは、ヒト属(Homo)とチンパンジー属(Pan)の分岐以降、200万年前までの人類系統の進化史全体の舞台となった、人類のゆりかごとして認識されている。本総説では、さまざまな種類のデータを検討して、アウストラロピテクス属の新たな描写を提示するとともに、この属が人類進化に果たした役割を明らかにする。長い間、アウストラロピテクス属に関する我々の知識はアウストラロピテクス・アフリカヌスとアウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)の両方から得られたもので、この属の種は、主にチンパンジーに似た頭蓋骨、突顎性の顔面、チンパンジーよりもわずかに大きな脳を持つ、石器を使わない二足歩行動物として描かれてきた。しかし、この描写はその後の野外調査や実験室での発見によって書き換えられ、アウストラロピテクス属の種は、習慣的に二足歩行する動物であったが樹上性行動も行っていたこと、食餌に動物資源を加えるために時折石器を使用していたこと、そして、おそらく類人猿と比較して幼体の成体への依存度が高かったことが明らかになった。アウストラロピテクス属からは、ヒト属をはじめ複数のタクソンが生じたが、その直接の祖先についてはいまだ明らかにされていない。まとめると、アウストラロピテクス属は、形態的・行動的・年代的に、古代のヒト族と推定される最初期の動物と、ヒト属を含む後のヒト族の間に位置することから、人類の進化史において重要な橋渡しの役割を担っていたと考えられる。

