がん:RBFOX2は膵臓がんにおける選択的スプライシングの転移性シグネチャーを調整する
Nature 617, 7959 doi: 10.1038/s41586-023-05820-3
膵管腺がん(PDA)は、アグレッシブな局所的浸潤と転移性拡散を特徴とし、高い致死性につながる。PDAプログレッション中のドライバー遺伝子変異は保存されているが、転移腫瘍の播種と関連付けられている特定の変異はない。今回我々は、原発性および転移性PDA腫瘍の大規模コホートのRNAスプライシングデータを解析し、PDAプログレッションと相関する差次的スプライシング事象を特定した。これらの事象のde novoモチーフ解析では、RBFOX2モチーフに高い類似性を持つモチーフが豊富に検出された。患者由来異種移植片(PDX)の転移性PDA細胞株におけるRBFOX2の過剰発現は、in vitroとin vivoでこれらの細胞の転移能を著しく低下させたのに対し、原発性膵臓腫瘍細胞株でのRBFOX2の枯渇は、これらの細胞の転移能を増加させた。これらの知見は、RBFOX2がPDAで強力な転移抑制因子としての役割を担っていることを裏付けている。RBFOX2標的遺伝子のRNA塩基配列解読とスプライシング解析で、RHO GTPアーゼ経路遺伝子群の濃縮が明らかになったことから、細胞骨格構造とフォーカルアドヒージョン形成におけるRBFOX2スプライシング活性の役割が示唆される。MPRIP(myosin phosphatase RHO-interacting protein)を介するものなど、RBFOX2により調節されるスプライシング事象の調整は、PDA転移や、細胞骨格構造の変化、接着斑形成の誘導と関連付けられた。本研究の結果は、PDAにおいてRBFOX2のスプライシング調節機能が腫瘍抑制因子として関与していることを立証するものであり、転移性PDAに対する治療法を示唆している。

