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腫瘍生物学:大気汚染物質による肺腺がんのプロモーション
Nature 616, 7955 doi: 10.1038/s41586-023-05874-3
環境物質への曝露ががんの形成を促進する仕組みは、完全には理解されていない。70年以上前に、腫瘍形成は2段階の過程で起こると提唱された。つまり、健康な細胞に変異を誘導するイニシエーション段階と、それに続いてがん発生を引き起こすプロモーション段階である。今回我々は、肺がんリスクとの関連が知られている、環境中の粒径2.5 μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)が、健康な肺組織において発がん性変異が既に存在している細胞に作用することで、肺がんを促進すると提唱する。喫煙未経験者あるいは軽度喫煙者でより一般的なEGFR駆動型肺がんに焦点を合わせたところ、4カ国の国内コホートのEGFR駆動型肺がん3万2957症例において、PM2.5レベルと肺がんの発生率の間に有意な関連があることが分かった。マウスの機能モデルから、大気汚染物質が、マクロファージの肺への流入とインターロイキン1βの放出を引き起こすことが明らかになった。この過程によって、EGFRの変異したII型肺胞上皮細胞内で前駆細胞様の細胞状態が引き起こされ、腫瘍形成が促進される。3つの臨床コホートで295人に由来する組織学的に正常な肺組織に対して行った超高深度変異プロファイリングにより、健康な組織試料の18%にEGFR、53%にKRASの発がん性ドライバー変異があることが明らかになった。まとめるとこれらの知見は、大気汚染物質PM2.5には腫瘍促進の役割があることを裏付けており、疾病負荷を低減するために大気汚染に対処する公衆衛生政策イニシアチブを推進する力になる。

