Article
生物工学:シグナル伝達分子を採用してCAR T細胞の論理ゲート制御を可能にする
Nature 615, 7952 doi: 10.1038/s41586-023-05778-2
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞はB細胞悪性腫瘍の治療の全体像を変化させたが、ほとんどの標的抗原は通常細胞でも共通しているため、腫瘍以外のオンターゲット毒性のリスクが固形腫瘍に対するCAR T細胞開発の障害となっている。そこでCAR T細胞にブール論理ゲートを適用して、毒性を防ぐことが試みられているが、真に安全で有効な論理ゲートCARはまだ見つかっていない。今回我々は、従来のCD3ζドメインを、細胞内の膜近傍のT細胞シグナル伝達分子で置き換えるCAR改変法を報告する。ZAP-70 CARのような特定の膜近傍シグナル伝達CARは、CD3ζなどの上流シグナル伝達タンパク質を迂回しながら、in vivoでT細胞を活性化し、腫瘍を根絶できることが分かった。ZAP-70の主な役割は、LATとSLP-76をリン酸化することであり、これらがシグナル伝播の足場を形成する。我々は、LATとSLP-76の協調的な役割を利用して、LINK(logic-gated intracellular network)CARを作製した。これは、迅速で可逆的なブール論理ANDゲートCAR T細胞プラットフォームであり、有効性および腫瘍以外のオンターゲット毒性防止の両方で、他の系よりも優れている。LINK CARは、CAR T細胞が標的にできる分子の範囲を拡大し、これらの強力な治療薬を固形腫瘍や、自己免疫および繊維症などのさまざまな疾患に使用可能にするだろう。さらに、この研究は、細胞内部のシグナル伝達装置を表面受容体に転用できることを示しており、細胞工学の新しい道を開く可能性がある。

