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量子物理学:極性分子を用いて調整可能な遍歴スピンダイナミクス

Nature 614, 7946 doi: 10.1038/s41586-022-05479-2

強く相互作用するスピンは、磁性から量子情報処理まで、多くの興味深い現象や応用の基礎となっている。運動と結合した相互作用スピンは、スピンの引力によって生じるスピン対形成に起因する超流動などのエキゾチックなスピン輸送現象を示す。こうした複雑な現象を理解するために、制御性の高い相互作用スピン系が求められている。量子スピンダイナミクスは、異なる機能を持つさまざまなプラットフォームで研究されてきた。今回我々は、スピン1/2系が分子回転準位に符号化されている、二次元平面に閉じ込められたカリウム–ルビジウム分子気体を用いて、双極子相互作用によって可能になる調整可能な遍歴スピンダイナミクスを実証する。双極子相互作用によって、回転遷移周波数のシフトや、スピンと運動の結合から出現する衝突に制限されるラムゼーコントラスト減衰が生じる。電場の強さ、電場の向き、内部分子状態を変化させることによって、イジング相互作用とスピン交換相互作用の両方が精密に調整される。この完全な調整能によって、スピンハミルトニアンの静的制御と動的制御の両方が可能になり、コヒーレントスピンダイナミクスの反転が可能になる。今回の研究は、調整可能な強い双極子相互作用を用いて多体スピンダイナミクスやスピン運動の物理の探索を可能にする相互作用スピンプラットフォームを確立するものである。

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