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免疫学:抗体フィードバックはSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の免疫記憶を調節する

Nature 613, 7945 doi: 10.1038/s41586-022-05609-w

抗体による体液性免疫のフィードバック阻害は、1909年に初めて報告された。その後の研究で、抗体は状況に応じて、免疫応答を増強あるいは阻害し得ることが示された。しかし、既存の抗体が記憶B細胞の発達に影響を及ぼす仕組みについては、ほとんど明らかにされていない。今回我々は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する2種類の高親和性モノクローナル抗体を投与され、その後、mRNAワクチンを2回接種した人において、記憶B細胞の応答を調べた。その結果、モノクローナル抗体を投与された人の抗原結合価と中和価は、対照者と比べてごくわずかしか低下していないことが分かった。一方、モノクローナル抗体接種者の記憶B細胞は、対照者の記憶B細胞とは異なり、少数の体細胞性変異を持つ低親和性IgM抗体を主に発現し、エピトープの遮蔽と一致して受容体結合ドメイン(RBD)への標的特異性が変化していた。さらに、調べた77種類の抗RBD記憶抗体のうち、ウイルスを中和したのは1種類だけだった。これらの知見の根底にある機構をマウス実験で調べたところ、同じ抗体の存在下で形成された胚中心は、低親和性のB細胞で占められていることが分かった。我々の結果は、既存の高親和性抗体は、(1)B細胞の活性化閾値を低下させ、結果として多数の低親和性クローンが免疫応答に加わることを可能にする、(2)コグネイトのエピトープを直接遮蔽するという、2つの異なる機構によって胚中心と記憶B細胞選択に偏りを生じさせることを示している。これは、ブースター(追加免疫)ワクチン接種によって誘導される記憶抗体の標的プロファイルが変化していることを、部分的に説明し得る。

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