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社会科学:パンデミック中のワクチン未接種者に対する差別的態度

Nature 613, 7945 doi: 10.1038/s41586-022-05607-y

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでは、ワクチン接種が十分に可能な国であっても、ワクチン未接種者の集団が相当数、存在し続けている。その結果、ワクチン接種は物議を醸す話題となり、抗議行動まで巻き起こしている。今回我々は、COVID-19ワクチンの接種状況によって定義されるさまざまな集団に関して、人々が家族や政治的な環境において、否定的な感情、固定観念、排斥的態度という形の差別的な態度を示すかどうか評価した。我々は、世界各地の多様な文化を反映する21カ国で、ワクチンを接種済みの市民と未接種の市民の間で、差別的態度を定量化した。その結果、コンジョイント実験による3件の研究(n = 1万5233)にわたって、ワクチン接種者が未接種者に対して示す差別的態度は、移民やマイノリティー集団に対して通常向けられる差別的態度に匹敵する高いレベルであることが実証された。対照的に、ワクチン未接種者が接種者に対して差別的態度を示すという証拠は、ドイツと米国で否定的な感情が見られたことを除いて、他には見つからなかった。ワクチン未接種者に対する差別的態度の存在を裏付ける証拠は、ハンガリーとルーマニアを除く全ての国で認められ、差別的態度は協調的な規範が強い文化ほどより強く表れることが見いだされた。協調の心理に関する以前の研究では、ワクチン接種の領域も含め、人々は「ただ乗り(フリーライダー)」と認識される人に対して否定的な反応を示すことが示されている。これと一致して、我々は、エピデミック制御という公共財への貢献者(すなわちワクチン接種者)は、フリーライダーと認識される者(すなわち未接種者)に対して、差別的態度をもって反応すること見いだした。国の指導者およびワクチン接種済みの国民は、COVID-19ワクチンの接種率を上げるために道義的責任に訴えたが、我々の知見は、基本的人権の享受の妨げへの支持を含むいくつかの差別的態度もまた、同時に出現したことを示唆している。

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