分子生物学:tRNAアンチコドンの短縮型ステムと変異型eRF1は停止コドンの再割り当てを可能にする
Nature 613, 7945 doi: 10.1038/s41586-022-05584-2
コグネイトなtRNAは、標準的な遺伝暗号に従って特定のアミノ酸を翻訳中のリボソームへ送達し、コグネイトなtRNAを持たない3つのコドンは、終止コドンとして機能する。原生生物の中には、この基本原則を無視し、全ての終止コドンをセンスコドンとして再割り当てしているものがある。今回我々は、未記載のトリパノソーマ類Blastocrithidia nonstopにおいて、タンパク質をコードすると推定される7259種類の遺伝子のインフレーム終止コドンを解析した。その結果、この種では、高レベルで発現している遺伝子ではインフレーム終止コドンは少数しかなく、UAAが唯一の終止コドンとして機能することが明らかになった。UAGとUAAに対して完全にコグネイトな新たなtRNAGluは、これらの終止コドンを再割り当てするように進化したが、UGAの再割り当てはtRNATrpCCAのアンチコドンステムが5塩基対(bp)から4 bpへ短縮することにより異なる道筋をたどった。カノニカルな5 bpのtRNATrpは、遺伝暗号で決まっているようにUGGを認識するが、その短縮型の4 bpバリアントは、インフレームのUGAにもトリプトファンを取り込む。B. nonstop、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)で両バリアントを改変し、それらを後者の2種で発現させることでこの進化的ねじれを模倣したところ、4 bpバリアント全てで、有意に高い読み過ごし(リードスルー)が記録された。さらに、B. nonstopの終結因子1(eRF1)をコードする遺伝子は、UGA認識を特異的に制限する変異を1つ獲得しており、UGAの再割り当てをロバストに促した。繊毛虫類のCondylostoma magnumも、ほぼ同じ戦略を採用している。従って、これまでに知られていなかった普遍的な機構が、再割り当てされた終止コドンを持つ、非近縁の真核生物で利用されてきたことが明らかになった。

