構造生物学:CRISPR RNAをガイドとするトランスポゾンのホロ組み込み複合体の構造
Nature 613, 7945 doi: 10.1038/s41586-022-05573-5
CRISPR関連トランスポゾン(CAST)はプログラム可能な可動性遺伝因子で、RNAをガイドとする機構を用いて大きな積み荷DNAを挿入する。CAST因子には、複数の保存されているタンパク質、すなわちCRISPRエフェクター(Cas12kあるいはCascade)、AAA+調節因子(TnsC)、トランスポザーゼ(TnsA-TnsB)および標的部位関連因子(TniQ)が1分子ずつ含まれる。これらの成分は、複数のサブユニットからなる転移組み込み複合体(トランスポゾソーム)の形成を介して、協同してDNAを組み込むと考えられている。今回我々は、シアノバクテリアであるScytonema hofmannii由来の約1 MDaのV-K型CASTトランスポゾソーム(shCAST)を再構築し、単粒子クライオ電子顕微鏡を使ってその構造を決定した。このトランスポゾソームの構造から、成分間のモジュール的な結合が明らかになった。Cas12kはリボソームサブユニットのS15やTniQと複合体を形成し、完全なRループの形成を安定化している。TnsCは、TniQとTnsBとの結合表面を提供している。TnsC–TnsB結合はTnsCのC末端表面に見られ、これがATPアーゼ活性の刺激に関わっている。TnsCが集合して形成されたオリゴマーは、単離した状態で見られるらせん状の立体配置からわずかにずれているが、TnsCが結合した標的DNAのコンホメーションは、トランスポゾソーム内でのコンホメーションとは顕著に異なっている。その結果、TnsCはトランスポゾソーム全体で新たなタンパク質–DNA結合を生じさせ、それが転移活性に重要な役割を果たしている。さらに、トランスポゾソームには、TniQ近傍でのDNAの接触に違いのある2種類の異なるグループが存在することが明らかになった。これは、CRISPRエフェクターとの結合の仕方に適応性があることを示唆している。このshCASTトランスポゾソームの構造によって、CASTの転移システムに関する理解が進み、正確なゲノム編集への適用が行えるようにCASTの転移を改良する道が示された。

