Perspective
微生物学:胎児のマイクロバイオームに疑問を呈することで示された、低生物量微生物研究の落とし穴
Nature 613, 7945 doi: 10.1038/s41586-022-05546-8
ヒトの健康な妊娠において、胎児と出生前の子宮内環境(羊水および胎盤)に微生物群集が安定に定着しているかどうかについては、依然として議論が続いている。本論文で我々は、ヒト胎児における微生物集団の特徴を明らかにした最近の一連の研究を、生殖生物学、微生物生態学、バイオインフォマティクス、免疫学、臨床微生物学、ノトバイオロジーの観点から評価し、胎児が微生物と相互作用する可能性のある機構として考えられるものを検証する。我々の解析から、これらの研究で検出された微生物シグナルは、胎児試料を採取する臨床処置の際、あるいはDNA抽出やDNA塩基配列解読の際のコンタミネーションの結果である可能性が高いことが示された。さらに、健康な胎児組織に生きて増殖している微生物の集団が存在することは、免疫学、臨床微生物学、無菌哺乳類の作出の基本概念とは相いれない。これらの結論は、ヒトの免疫発達を理解する上で重要であり、他の多くの低生物量環境の微生物解析における共通の落とし穴を示している。胎児のマイクロバイオームの探求は、生物量が少ないか存在しない場合の、塩基配列に基づくマイクロバイオーム研究の課題を示す教訓となる例であり、生物学的、生態学的、機構的な概念も統合することでコンタミネーションの制御を超えた域に達するような、学問分野横断的な手法の必要性を強調している。

