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コロナウイルス:ニルマトレルビルに対するSARS-CoV-2の抵抗性に関わる複数の経路

Nature 613, 7944 doi: 10.1038/s41586-022-05514-2

ニルマトレルビルは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の3CLプロテアーゼを標的とする経口抗ウイルス薬で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して臨床的に有効であることが実証されている。しかし、SARS-CoV-2が他の治療法に対する抵抗性を進化させてきたため、ニルマトレルビルに関して同様のことが起こる可能性が懸念される。今回我々は、2つの独立した手法(一方は大規模試験)を用いて、ニルマトレルビル存在下でSARS-CoV-2をin vitro継代することによって、この可能性を調べた。その結果、実際に、高度に抵抗性を示すウイルスが両方から出現し、それらの配列では多数の3CLプロテアーゼ変異が見られた。反復試料を用いた実験では、53の独立したウイルス系統が選択され、3CLプロテアーゼの23の異なる残基で変異が見つかった。しかし、ニルマトレルビル抵抗性にはいくつかの共通した変異経路が選好されており、大部分のウイルスは先行変異であるT21IあるいはP252L、T304Iに由来する。13の組換えSARS-CoV-2クローンの作製と解析によって、これらの変異では低レベルの抵抗性しか生じず、より強い抵抗性には、さらなる変異の蓄積を必要とすることが分かった。E166V変異は最も強い抵抗性(およそ100倍)をもたらしたが、この変異ではウイルス複製の適応度が失われており、これはL50FやT21Iなどの代償的な変化によって回復した。我々の結果は、ニルマトレルビルに対するSARS-CoV-2の抵抗性は、in vitroでは複数の経路を介して実に容易に生じることを示しており、また本研究で観察された特異的な変異は、抵抗性機構の詳細な研究や次世代のプロテアーゼ阻害剤の設計に役立つ強固な基盤を形成する。

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