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物性物理学:反強磁性体トンネル接合における八極子駆動磁気抵抗
Nature 613, 7944 doi: 10.1038/s41586-022-05463-w
磁気トンネル接合(MTJ)を通り抜けるトンネル電流は、絶縁体層を挟んだ磁性金属の電極における磁化の相対的な向きに強く依存し、スピントロニクスデバイスでの効率的な読み出しを可能にする。そのため、トンネル磁気抵抗(TMR)は界面におけるスピン偏極に比例すると考えられ、これまでは主に強磁性体で研究されてきた。今回我々は、Mn3Sn/MgO/Mn3Snからなる反強磁性体のみを用いたMTJにおいて、TMRを観測したことを報告する。このTMRは、カイラル反強磁性状態におけるクラスター磁気八極子の平行配置と反平行配置の間で生じ、我々は測定によって、室温で約2%のTMR比を得た。さらに我々は、Fe/MgO/Mn3Sn-MTJを用いて測定を行い、反強磁性体における異方的な縦スピン偏極電流の符号と方向を、八極子の向きによって制御できることを示した。驚くべきことに、反強磁性体のみを用いたMTJのTMR比(約2%)は、観測されたスピン偏極を用いて見積もられた値よりはるかに大きかった。我々は、カイラル反強磁性体Mn3SnからなるMTJでは、時間反転対称性を破るクラスター磁気八極子の偏極によって、非常に大きなTMR比を実現できる可能性があることを、理論的に見いだした。今回の研究成果は、反強磁性体を用いた超高速高効率スピントロニクスデバイスを開発する基礎となる。

