構造生物学:黄色ブドウ球菌の広域β-ラクタム耐性の構造基盤
Nature 613, 7943 doi: 10.1038/s41586-022-05583-3
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の広域β-ラクタム系抗生物質に対する耐性は、世界的な医療負担になっている。臨床株では、耐性は主にBlaR1によって制御される。BlaR1はセンサードメインのアシル化を介してβ-ラクタムを感知する受容体であり、膜を貫通するシグナル伝達を引き起こし、細胞質に面したメタロプロテアーゼドメインを活性化する。このメタロプロテアーゼドメインはBlaIの抑制を解除する役割を持ち、blaZ(β-ラクタマーゼPC1)とmecA(β-ラクタム耐性細胞壁トランスペプチダーゼPBP2a)の発現を引き起こす。今回我々は、単離の難しさを克服して、BlaR1は不活性化の必要に応じて直接BlaIを切断するのであり、これまで言われていたような他の構成要素は必要ないことを明らかにした。野生型BlaR1と自己切断できないF284A変異型BlaR1について、β-ラクタムがある場合とない場合のクライオ電子顕微鏡構造から、我々が示唆するようなドメインを交換した二量体が、内部のシグナル伝達ループの安定化に重要であることが分かった。BlaR1はSer283とPhe284の間で自発的にシスに自己切断するが、我々はこの自己切断とBlaI切断の基盤となる触媒機構と特異性を明らかにした。これらの構造から、センサードメインの活性部位に競合的に結合した突出した細胞外ループがβ-ラクタムによって排除されて、アロステリックなシグナル伝達が生じることが示唆された。その後、センサードメインの膜方向へのずれや、それに伴う亜鉛メタロプロテアーゼドメインの変化などの動的な動きが引き起こされる。これが活性部位から自己切断産物の排出を促進し、平衡がずれてBlaIの効率の良い切断を許容する状態になると考えられる。まとめると本研究は、リプレッサーを直接切断することで作用(この場合は抗生物質耐性)を仲介する二成分シグナル伝達受容体の構造を明らかにしている。

