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神経科学:病原菌はフェロモン応答を調節して交尾を促進する
Nature 613, 7943 doi: 10.1038/s41586-022-05561-9
病原体は遍在性の選択圧を生み出し、多くの動物では宿主と病原体の相互作用が社会的行動を変化させる。しかし、社会的行動における病原体誘導性変化の基盤となる神経機構はほとんど知られていない。今回我々は、線虫の一種Caenorhabditis elegansの成虫の雌雄同体において、病原菌(緑膿菌〔Pseudomonas aeruginosa〕)への曝露が、化学受容体STR-44の発現を誘導してフェロモンへの感覚応答を調節し、交尾を促進することを示す。C. elegansの雌雄同体は、標準的な条件下では、フェロモンであるアスカロシドの混合物を忌避し、個体の分散が促進される。ところが、病原性緑膿菌への曝露により、誘引走化性を仲介するAWA感覚ニューロンでのフェロモン応答が可能になって、忌避が抑制されることが分かった。病原菌への曝露によって、AWAニューロンでstr-44の発現が誘導され、この過程を調節する転写因子zip-5もAWAで病原菌誘発性の発現上昇を示す。STR-44はフェロモン受容体として働き、そのAWAニューロンにおける機能は病原菌誘導性AWAフェロモン応答やフェロモン忌避の抑制に必要である。さらに、主に自家受精によって生殖するC. elegansの雌雄同体は、病原菌への曝露後に雄との交尾率が高まること、そしてこの上昇にはAWAニューロンにおけるstr-44が必要であることが分かった。従って、我々の結果は、病原菌が誘導する社会的行動の可塑性の原因となる機構を明らかにしており、この可塑性が遺伝的多様性を促進し、宿主動物の適応を促している可能性がある。

