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コロナウイルス:剖検時の人体や脳におけるSARS-CoV-2感染とその残存

Nature 612, 7941 doi: 10.1038/s41586-022-05542-y

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による急性感染時に多臓器機能不全を引き起こすことが知られており、一部の患者はSARS-CoV-2の急性期後後遺症と呼ばれる長引く症状を経験する。しかし、気道外での感染量やウイルス除去までの時間について、特に脳ではあまりよく調べられていない。今回我々は、COVID-19で死亡した44名の患者に対して徹底的な剖検を行い(その内11名では中枢神経系の広範な試料採取を行った)、急性感染から発症後7カ月以上までの、脳を含めたヒトの体中のSARS-CoV-2の分布や複製、細胞タイプ特異性をマッピングし定量化した。その結果、SARS-CoV-2は主に重症COVID-19の死亡患者で広範に分布しており、ウイルス複製は感染早期に複数の呼吸器・非呼吸器組織(脳を含む)で見られることが明らかになった。さらに1つの症例では、発症後230日でも、脳全体を含む多くの解剖部位でSARS-CoV-2のRNAが持続的に検出された。SARS-CoV-2のRNAは全身に広く分布していたが、気道外では炎症や直接的なウイルスによる細胞病理所見をほとんど認めなかった。我々の結果は、一部の患者ではSARS-CoV-2は全身性の感染を引き起こし、数カ月にわたって体内に残存する可能性を示している。

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