生化学:タンキラーゼの重合による活性化の構造基盤
Nature 612, 7938 doi: 10.1038/s41586-022-05449-8
ポリADPリボシルトランスフェラーゼであるタンキラーゼ(TNKS、TNKS2)は、WNT–βカテニンシグナル伝達やテロメア長の維持、Hippoシグナル伝達、DNA損傷修復、グルコース恒常性などの、病気に関連する幅広い細胞過程を制御しており、タンキラーゼ阻害剤の開発はこうした理由で奨励されてきた。しかし、タンキラーゼの活性を制御する機構に関する知見はまだ十分ではない。タンキラーゼの触媒作用と非触媒作用は共に、重合によるフィラメント形成に依存している。今回我々は、タンキラーゼの最小活性単位[重合するステライルαモチーフ(SAM)ドメインとそれに隣接する触媒ドメインからなる]によって形成されるフィラメントを、クライオ電子顕微鏡によって再構成した。SAMドメインは新規な逆平行二重らせんを形成し、そこから突き出している触媒ドメインは頭部–頭部結合、尾部–尾部結合が繰り返されるように配置されている。頭部同士の結合はタンキラーゼ類で非常によく保存されており、触媒ドメイン内の活性部位にアロステリックスイッチを作り出して、触媒作用を促進している。尾部同士の結合が触媒作用に与える影響は限定的だが、タンキラーゼがWNT–βカテニンシグナル伝達に果たす機能にはこれが不可欠である。今回の研究によって、SAMドメインのこれまで知られていなかった重合方式が明らかになり、超分子の集合が触媒機能や非触媒機能を制御する仕組みが示され、DNAに依存しないポリADPリボシルトランスフェラーゼの調節に関する構造的に重要な手掛かりが得られた。これらの知見は、タンキラーゼを調節し、疾病発症機構へのその関与を解明するという今後の試みを導くものとなるだろう。

