がん:がんにおける、変異過程によって誘導される単一細胞のゲノム変動
Nature 612, 7938 doi: 10.1038/s41586-022-05249-0
ヒトがんにおいてゲノム不安定性の基盤となる細胞間のコピー数変化が、ゲノムや表現型の変動、ひいてはがんの進化をどのように駆動するかについては、いまだに研究が不足している。今回我々は、野生型、TP53欠損、TP53欠損;BRCA1欠損またはTP53欠損;BRCA2欠損の乳腺上皮細胞(1万3818ゲノム)と、原発性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)および高異型度漿液性卵巣がん(HGSC)の細胞(2万2057ゲノム)に、拡張型の単一細胞全ゲノム塩基配列解読法を適用することで、細胞間の構造変動によって定められる3種類の「前景」変異パターンを明らかにした。細胞およびクローンに特異的な高レベル増幅、ハプロタイプ特異的なコピー数の平行変化、コピー数断片長の変動[鋸歯状構造変動(serrate structural variation;SSV)]は、表現型の結果および進化的な結果が測定可能であった。TNBCやHGSCでは、既知のがん遺伝子におけるクローン特異的な高レベル増幅は、相同組換え欠損を伴う腫瘍と比べ、折り返し型(fold-back)逆位を持つ腫瘍で非常によく見られ、また、クローン間の表現型変動の増大と関連していた。ハプロタイプ特異的な平行変化もよく観察され、これは、系統発生学的な進化の多様性やクローン特異的な単一対立遺伝子性発現につながった。鋸歯状バリアントは、折り返し型逆位を伴う腫瘍で増加しており、細胞集団のゲノム多様性の増加と高度に相関していた。まとめると我々の知見は、TNBCやHGSCにおいて、細胞間の構造変動が表現型の多様性および進化的多様性の起源に寄与していることを示すとともに、個々のがん細胞のゲノムや変異の状態についての手掛かりをもたらす。

