がんゲノミクス:急性骨髄性白血病でのサブタイプ特異的な3Dゲノム変化
Nature 611, 7935 doi: 10.1038/s41586-022-05365-x
急性骨髄性白血病(AML)は、不均一な一連の骨髄性悪性腫瘍であり、その特徴にはエピジェネティック修飾因子、転写因子およびキナーゼの変異が含まれる。しかし、AMLでのこれらの変異がどの程度になるとクロマチン3D構造の変化が引き起こされ、骨髄の形質転換の一因となるのかは明らかになっていない。今回我々は、Hi-C法と全ゲノム塩基配列解読を用いて、AML患者からの25の試料と健常ドナーからの7つの試料を解析した。その結果、A/Bコンパートメント、トポロジカルドメイン、クロマチンループで、再発性でサブタイプ特異的な変化が見つかった。同じAML試料でのRNA塩基配列解読とATAC-seq、それにCTCF、H3K27acおよびH3K27me3に対するCUT&Tagの結果からも、プロモーターとエンハンサー間およびプロモーターとサイレンサー間のAML特異的なループが広範囲にわたって繰り返し存在することが明らかになった。我々はまた、CRISPRを用いた欠失と干渉により、標的遺伝子に対する抑制性ループの役割を検証した。AMLの試料では、構造変化によって引き起こされたエンハンサーハイジャック事象やサイレンサーハイジャック事象がさらに見つかった。ハイジャックされたエンハンサーはAML細胞の増殖に関わっていることがCRISPRスクリーニングにより明らかになった一方で、ハイジャックされたサイレンサーは下方調節の役割を持つことがCRISPR干渉による脱抑制によって実証された。さらに、20のAML試料および正常試料の全ゲノムバイサルファイト塩基配列解読によって、DNAメチル化、CTCF結合、3Dゲノム構造の間の繊細な関係が見つかった。AML細胞のDNA低メチル化剤処理や、DNMT1、DNMT3A、DNMT3Bのトリプルノックダウンを行うことで、DNAメチル化を操作して3Dゲノム構造と遺伝子発現を元の状態に戻すことができた。まとめると、この研究は白血病研究のための新たな情報資源を提供するものであり、ヒト疾患での抑制性ループおよびハイジャックされたシスエレメントの役割を明らかにしている。

